失敗しない外壁塗りかえのために
1 塗りかえのタイミングを検討する時期
通常、壁の塗装は7年くらいで劣化が始まり、10年程度に1度が塗り替えスパンの目安です。しかし使用されている塗料の性能や周囲の環境によって大きく違います。
ひび割れや塗膜のはがれ、カビの発生がサインです。屋根は普段目にしにくいので気づきませんが、強い太陽光や雨風にさらされるため寿命は短く、7年程度です。さらに木部の塗装の寿命はさらに短く、3~5年が塗り替えの目安です。
2 サイディングの塗装はモルタルより重要
住宅の外壁材は、大きく「サイディング」と「モルタル」の2種類に分けられます。
モルタルはそれ自体が著しく劣化することは少ないのですが、サイディングはセメント原料をプレスし加工したものなので、塗装による保護がないと水分が浸透し、劣化の進行が早くなります。
初めの製品段階で既に塗装済みなので気づきにくいのですが、定期的な塗り替えは必要です。
塗り替えは全体を見て最適な選択を
塗装が太陽の紫外線の影響で劣化し、白い粉になるのが「白亜化」または「チョーキング」と呼ばれる現象です。
手のひらで塗装面を擦って、白い粉が付いたら塗り替え時のサインと言われます。
しかしリフォームは一部分だけの状態ではなく、全体を見て、塗装方法も合わせて判断することが重要です。
3 スレート屋根は塗装で劣化防止
屋根は直射日光を浴び、風雨にもさらされる厳しい環境にあるため、外壁より塗り替えの重要性が高くなります。
和瓦は塗装の必要はありませんが、「コロニアル」や「カラーベスト」と商品名でも呼ばれるスレート瓦はセメントを板状にしたものなので、塗装が皮膜となって劣化を防ぐ役割が大きいのです。
普段目にしない場所なので、定期的に診断して劣化状況を確認しておくようにしましょう。
屋根塗装は外壁より厳しい目で
屋根は外壁と比べて塗料の選択や施工には専門の知識や技術が必要です。
例えば、太陽熱を反射して省エネ効果がある遮熱塗料や、耐久性の高い無機塗料など屋根専用の塗料があります。
また、経験の浅い業者(作業員)だと工事中に屋根材や下地材を踏んで傷つける場合があるので、施工店選びには注意が必要です。
4 塗装の種類は今後の生活設計で選ぶ
塗料を選ぶときは色や表面の仕上げなどの意匠が気になりがちですが、最も重要なのは耐久性とコストのバランスです。
耐久性とコストを左右するのが、塗料に含まれている合成樹脂の種類です。
樹脂の種類は大きく分けて油性、アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素と5種類あり、耐久性と価格もこの順に上がります。
意匠性は樹脂の種類にはほとんど関係ありませんので、予算と今後の生活設計を合わせて、最も合理的な種類を選ぶように検討することが大事です。
塗料の種類と塗り替え目安
種類 | 特徴 | 塗り替え目安 | 価格 |
---|---|---|---|
フッ素塗料 | 価格は高いが最も耐久年数が長い塗料。防汚性にも優れる(塗りかえ俱楽部使用) | 約10年 | 高い
▼
安い |
シリコン塗料 | 弾力性があり耐久性が高いため長期間の対応に向く。最近、主流となっている塗料 | 7~9年 | |
ウレタン塗料 | 光沢があり、厚く塗りやすい。価格と機能のバランスが良い塗料 | 5~7年 | |
アクリル塗料 | 安価なため10~20年前までは最も一般的に使われていた外壁塗装材 | 4~5年 | |
油性塗料(OP) | 主に木部や鉄部に塗るいわゆるペンキ | 3~4年 |
5 お施主様も塗装の工程を知っておく
リフォーム工事は、工事の工程はほとんど業者任せになることが多いようです。せっかく費用をかけるのですから、工程工法を理解していただいて、ご納得いただいた目で仕事をチェックすることが大事です。
塗装工事にはたくさんの手順があります。手順を飛ばしたり、簡単に済ませても、仕上がりはちょっと見ただけでは分かりにくいのですが、品質や寿命、仕上がり具合が大きく変わってきますので、この機会に手順を覚えておきましょう。
塗装工事の工程
STEP1 足場設置
STEP2 高圧洗浄
STEP3 下地調査
STEP4 補修
STEP5 養生
STEP6 外壁屋根塗装(下塗り)
STEP7 外壁屋根塗装(中塗り)
STEP8 外壁屋根塗装(上塗り)
STEP9 養生シート・足場撤去
6 塗装の出来栄えは下地調査で決まる
下塗り前に外壁のひび割れや損傷部を補修する「下地調整」という作業があります。仕上がりを美しくするだけでなく、雨水の侵入を防止するためには重要な作業です。下地調整には古い塗料をはがしたり、わざとヤスリなどで表面を荒らして塗料の乗りをよくするための「ケレン」と呼ばれる作業もあります。
”いい仕事”はひび割れの処理でわかる
古いモルタル壁には筋状のひび割れが入りやすくなります。小さな隙間でも雨水が侵入しますので下地処理が必要です。上からシーリング材を塗るだけの場合も多いですが、特に心配な箇所にはヒビに沿って「Vカット」加工をし、十分な深さと幅を作ってから、シーリング材の密着性を良くするためにプライマーと呼ばれる接着剤をぬるなど、見えないところに丁寧な仕事をするのが本物のプロです。
7 本塗り前の下塗りに要注意
お肌の化粧乗りを良くするために、下地のクリームやローションが欠かせないように、塗装の仕上がりも下塗りが大事です。
下塗りは塗装の密着を良くして、塗装ムラを防ぐために、シーラーと呼ばれる塗料を塗る作業です。中には余分な水で薄めたものを塗ったり、ひどい場合は下塗り工程そのものを省略するなど、手抜きをする業者もいるので要注意です。
写真で記録を残してもらうなど、工程の確認ができる業者が安心です。
上塗りの2回が基本
通常上塗りは2回塗装します。より強く美しく仕上げるためには最低2回は必要なのです。ここで重要なことは、塗料を決められた濃さに希釈し、十分に乾燥させてから2回目を塗ることにより、はじめてその塗料の持つ耐久性が確保できるということです。
8 信頼できる業者を見きわめる
塗装リフォームは、家の中に入らなくても、外観だけで塗装の劣化状態がわかるため、比較的営業のしやすいリフォームの一つだと言われています。そのため、業者間の競争も激しく、巧妙なセールストークで近寄ってくる業者が少なくありません。
「この近くで施工しているのでお宅も」や「この地域でモニターになってくださるお客様を探しています」というのは訪問販売業者の常套句です。即決は避け実績をよく確認してください。
優良な塗装業者5つのチェックポイント
本当は実際に施工してもらった方の口コミ評判が一番ですが、客観的に業者の信頼性を判断するポイントはこの5点です。
1 出来上がりイメージを事前にシュミレーションで提案してくれる。
2 見積もりの内訳がわかりやすく、過剰な値引きで受注を急がない。
3 洗浄後の乾燥や下地調整の工程に余裕のある日程を組んでいる。
4 飛散防止シートが隙間なく張られている。(近隣への配慮が十分されている)
5 写真できちんと記録を残している。(過去の施工例写真で確認)